2012年4月1日日曜日

カモメはカモメ



3年ほどまえに短期留学していたイギリス南部の港町プリマスにもカモメがいて、海の近くだけでなく街中のショッピングモールとかにも鳩のようにいて、ゴミの日にはカラスのように朝ゴミを漁る。大きさは山下公園にいるカモメよりふたまわりくらい大きく、顔がこわい。帰国して山下公園のカモメを見たとき、なんとやさしく愛らしいことか、と思ったものである。

が、今年2月のすごく寒い日、そのプリマスで見たこわい顔のカモメを山下公園で見つけたのである。7~8羽くらいが氷川丸の鎖の上を陣取っていて、かわいい顔カモメはこわくて近寄れない、ように見えた。それからしばらくして3月初め、氷川丸の鎖の上はびっしりとかわいい顔カモメ。その中に一羽だけこわい顔が。そして先週、ついに鎖の上はオールかわいい顔カモメになっていた。周りを見渡しても、もうこわい顔のカモメはいない。

こわい顔カモメよ、どこから来てどこへ行ったのか。
毎年、冬になると来ているの?

あれはいつだったか菊地成孔さんがNHKスタジオパークに出演されていたとき、好きな言葉は何ですかと聞かれて、中島みゆきさんの「かもめはかもめ」という言葉が好きです、と瞬時に答えておられた。かもめはかもめ、わたしはわたし。

菊池成孔さんは20年ほど前に上智大学で観た。私も出演したジャズ研の定期演奏会の最後に、OBとしてゲスト出演されたのである。天才というのはこういう人のことをいうんだなと、生まれて初めて思った。かなり間近に、同じ空間にいるのに、浮き上がっているような、磁場だか空気の濃度だかが違う空間でサックスを吹いたりしゃべったりしているように見えた。磁場だか空気の濃度だかが違う分、苦しそうなかんじにも、見えた。